Cinema 4Dプラグイン「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」をユーザー同士で共同開発

Cinema 4Dプラグイン「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」とは

流体解析及び可視化を専門に行う株式会社エアキュービックの橋本久典氏は、Cinema 4D用プロジェクションマッピング シミュレーションプラグイン「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」を開発した。
「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」とは、現在販売されている全てのプロジェクターの仕様情報をデータベース化し、プラグイン側から条件に合うプロジェクターを検索後、Cinema 4Dのシーン上にプロジェクターオブジェクトとして表示するプラグインだ。
プロジェクターからの投影距離、スクリーンの大きさ、現場の明るさ、天井の高さなどのさまざまな環境条件から最適なプロジェクターが瞬時に選定されるようになっている。新製品がリリースされた場合でもデータベースを更新するとプラグインに即座に反映され図面に落とし込み可能だ。
もちろん、プロジェクターオブジェクトが画面に表示されるだけではない。各プロジェクターの細かなスペックがプラグイン上で確認でき、それによって正確なプロジェクション設計が可能になっている。
実はこのプラグイン、Cinema 4Dのユーザー同士が協力をして開発した完全オリジナルのプラグインである。

プロジェクションマッピング シミュレーション「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」画面

「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」開発のきっかけ

プラグインを開発をした橋本氏は、建物内の気流をシミュレーション解析し、その結果をVR等を用いて視覚化するエキスパートである。当然シミュレーションをするには建物のモデルが必要となり、モデリングツールにはCinema 4Dを使っている。また、他の解析ソフトにデータを渡すためのコンバーターとしてもCinema 4Dを活用している。
橋本氏はCinema 4Dでモデリングをする際、標準で足りない機能は自分でプラグインを作ってカスタマイズしている。Cinema 4Dのスクリプト言語であるCOFFEEをきっかけに独学でプログラムを習得しプラグインを作るまでになった。

ある日、橋本氏は株式会社アシュラスコープインスタレーションの 秋葉氏がCinema 4Dのプラグインを切望しているtweetを見かけた。問いかけてみると「各社から様々な仕様のプロジェクターが販売されている。各プロジェクターの仕様と連動したCinema 4D用プラグインでシミュレーションの効率を上げたい」という内容だった。秋葉氏は、Cinema 4Dユーザーであり、20年以上前よりプロジェクションマッピングを手掛けている。2011年に株式会社アシュラスコープインスタレーションを設立。建築の知識を活かして、空間に新しい価値や体験を与える、最先端の映像演出を提供している。

このユーザー同士のtweetがきっかけで2社は共同してプラグインを開発することとなった。橋本氏のプログラミングスキル、秋葉氏のプロジェクションマッピング現場での経験値を組み合わせ、プロジェクター シミュレーション プラグイン「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」の開発に取り組んだ。

「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」の機能

橋本氏は、プロジェクションマッピングの図面作成に必要な条件を聞き取り、機能としてプラグインに搭載していった。2社は「建築」「Cinema 4D」「シミュレーション」という共通の知識を持っている。それらの知識を存分に発揮することで「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」は機能追加、改善、そして強化しつつ完成していったのである。
例えば、あまり一般的には知られていないことだが、熱を持つプロジェクターには空冷のための給排気のクリアランスエリア確保が重要である。プロジェクターを常設する案件ではランプ交換口へのアクセスも重要になる。「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」はそれらの情報もCinema 4D上に表示されるようになっている。さらに、クリアランスエリア内に障害物があるとシーンの中でエラーが表示されるため、図面やプロジェクターの知識がなくても一目で状況が分かる。現場の大工さんやクライアントさんへの説明もしやすい。



プロジェクターオブジェクトの周りにあるグリーンのボックスが給排気に必要なクリアランスエリア。プロジェクターの仕様書に基づいている。

クラランスエリアに障害物があると「Clash」というエラーが表示される。

株式会社アシュラスコープインスタレーション 設計担当 森原 氏
『3Dビュー上で確認しながらの図面作成は、仕様書を見ながら計算していた時に比べ大幅にスピードアップしました。「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」を使った正確なシミュレーションは現場でのミスを減らし、クライアントの希望と問題点と解決方法を抽出しやすくなりました。』

 

「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」UI 画面 1
ズームやレンズシフトなどはFOVやフィルムオフセットなどを数値入力することなく視覚的に操作でき、さらにメーカー公称の誤差を検討に含めるか否かも選択することができる。


「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」UI 画面 2
プロジェクターは種類によって、本体をどの程度傾けることができるか、真上や真下に向けてプロジェクションできるか、さらには本体を立てた状態で使用できるかなどの制約がある。
それらの情報もプラグイン上で視覚的に操作が可能となっている。許可されていない角度への傾きや回転などは行えないようロックがかかる。

森原 氏
『橋本さんは、建築現場の経験もあるため、我々の言いたいことややりたいことを瞬時に理解してプラグインに載せてくれるんです。プロジェクターの傾きに制限があるとか、かなりマニアックで専門的な要求でもくみ取ってくれる。これが全く違う業種のプログラマーさんだったら説明だけでも大変だったと思います。』
「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」画面 3
Cinema 4DのProjectionManを拡張し、どの範囲にプロジェクションできるかをリアルタイムに確認できる。複雑な形状へのプロジェクションで発生する影もシミュレーションできるため映像での演出がしやすくなる。

 

秋葉 氏
正確なプロジェクターの設置位置が事前に割り出せるので映像の演出に存分に時間をかけられます。図面作成の時間が減り、投影する映像のクオリティアップにつながったことはとても大きいです。プラグイン名にもなっている「MEDIARIUM(R)(メディアリウム)」は、プロジェクションマッピングの進化系としてブランド化した弊社が持つ独自技術の総称なんです。「MEDIARIUM(R)」によってグラフィック・映像・音楽・インタラクティブ要素を空間へ高次元に融合することができます。空間とコンテンツの可能性を最大に引き出す投影設計を実現し、幅広いニーズに応えるために「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」を活用していく予定です。』

橋本 氏
今回「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」を開発させていただき感じたことは、Cinema 4Dの基本性能の高さです。開発したプラグインはプロジェクターとレンズなど、部品ごとのオブジェクトを複数組み合わせて1つのオブジェクトとして表現しています。この部品を入れ替えると様々なプロジェクターに対応できます。Cinema 4Dの基本概念は一見シンプルですが、実は高い柔軟性と拡張性を持っていると改めて感じました。

 

Cinema 4Dプラグインサイト『Coffee Stock』

橋本氏が今までに作ったCinema 4Dプラグインは『Coffee Stock』というサイトで公開・販売をしている。

スマッシュヒットプラグインはCinema 4DのUVをより柔軟にコントロールできる「UV Tool Box」だ。橋本氏のプラグイン ユーザーは国内に留まらず海外にも多くいる。開発しているプラグインの情報はTwitterやCoffee Stockのサイトで常に発信している。
注意:今回ご紹介した「MEDIARIUM_TOOLS_PJ」は販売をしておりません。

TwitterではCinema 4Dユーザー同士のやりとりを多く見かける。Twitterに限らずSNS上には国内外を問わず多数の作品や情報がアップされているので是非チェックをしてみてほしい。

 

株式会社エアキュービック 橋本 久典
一級建築士。
個人活動としてCoffee Stockにてフリー&シェアウェアプラグインを公開しています。
主にワークフロー系やモデリング系のプラグインを中心に開発しています。

Coffee Stock http://coffeestock.boo.jp/Blog/
e-mail coffeestock.anoano@gmail.com
twitter @anoanoW

 

株式会社 アシュラスコープインスタレーション


プロジェクションマッピングをはじめとする、映像演出を空間に取り入れるデザインプロダクション。 投影に関する特許を保有し、空間に特化した豊富な実績を武器に、 企画・投影設計・機材選定・制作・オペレーションまでトータルプロデュース。2015年東京都ベンチャー技術大賞受賞、DSA日本空間デザイン賞・日本サインデザイン賞など受賞・入選多数。

http://www.projectionmapping.biz/