チュートリアルの途中でアニメできちゃった

TVアニメ『でびどる!』をCGで制作

TVアニメ『でびどる!』とは、人間界で暮らす悪魔少女・アイラ、シマ、はなの3人が、歌って踊って、洗脳する(?)アイドルを目指す物語。
TOKYO MXで毎週木曜日深夜25:05~25:20で放送他、WEB配信でも展開している。
第3話より先に第4話を放送するという、前代未聞のこともやってしまう、注目のアニメだ。
この『でびどる!』の制作を担当する、菅原そうた氏[監督/原案/脚本]とまさたかP氏[原案/企画/脚本/プロデュース]のお二人に話を伺った。

インタビュー●大橋博之

PROFILE

菅原そうた(写真左)

CG漫画『みんなのトニオちゃん』で漫画家デビュー。後、映像制作を行うようになり、近年は3DCGを駆使したTVアニメなどを手がけている。『gdgd妖精s』『Hi☆sCoool! セハガール』『おにゃんこポン』などで監督を務めている。

ホームページ: http://www.soogle.biz/
スタッフツイッター: https://twitter.com/sota_staff
ウィキペディア: https://ja.wikipedia.org/wiki/SOTA

まさたかP(写真右)

ボーカロイド曲のPV制作からプロになり、現在ではPVだけでなくさまざまなCMやアニメなどの映像制作からディレクターまで行っている。今回の『でびどる!』では、原案/企画/脚本/プロデュースを担当している。

ホームページ: http://www.xiv.earth/
ツイッター: https://twitter.com/masatakap

Cinema 4DでLat式アイラを再現

─『でびどる!』はどのようにして生まれたのですか?

まさたかP:『でびとる!』は「コチンPa!」シリーズの3作目ですが、そもそもは、パチンコ・スロット店を展開するアイランドさんから「オリジナルキャラクターであるアイラちゃんを使って店内映像を作って欲しい」というオーダーからスタートしました。それがテレビでも放送するということになり、「やるからには尖ったものにしたい!」ということから、15秒の最短アニメとして「コチンPa!」シリーズが生まれました。
「コチンPa!」シリーズでは「映像を菅原そうた監督ぽくしたい」というのがプロデュースする僕のなかに構想としてあったので、そうた監督に声をかけさせていただいた、というのが事の始まりです。

─『でびとる!』の制作で苦労したことはなんですか?

まさたかP:『でびどる!』で一番、難所だったのが、キャラクターデザインを担当したLatさんのキャラクターをCinema 4Dでいかに不具合なく表示させるか、でした。実は、LatさんのCGは特殊な構造で、ポリゴンが裏返っているんです。そのため、Lat式ミクをCinema 4Dで読み込むとキャラの顔が破綻するという問題が起こっていました。もともと、LatさんのCGはCinema 4Dでなくても読み込めない特殊な構造なんですけどね。

キャラクターデザイン担当のLatさんによるアイラのモデル。顔のメッシュは一般的な3Dキャラクターとは異なる。

─何か画期的な方法で?

まさたかP:Latさんには言ってないんですが、ポリゴンを削って(笑)。ただ、顔の構造はまったく同じにしています。つまり、Cinema 4DでLat式アイラを再現したわけです。

レンダリングを速くする試行錯誤の日々

─『でびどる!』で監督はどのような仕事をしているのですか?

菅原そうた:脚本を書いて、スタッフで相談し、完成された脚本で僕が自分でしゃべって音声を取り、それに合わせてVコンを作り、できたものを「作ってね」とアニメーターに渡して、完成されたデータを僕の方でCinema 4Dで読み込んで、レンダリングして、Aftereffectsで修正してレンダリングして納品、みたいな流れです。

─スケジュールは?

菅原そうた:第1話は1か月ありました。

まさたかP:第2話で3週間。

─た、た、たいへんなんですね。制作で問題はなかったですか?

まさたかP:Cinema 4Dで再現するのは研究として面白くやっていました。無事に表示できるようになってSketch and Toonでラインを入れる作業に入ったんですが、Latさんから「僕が納得するラインを入れて欲しい」と言われ、そうた監督に「Sketch and Toonで書き出すと綺麗なビジュアルができます」と言ったんですが・・・。

菅原そうた:僕は、Cinema 4Dを使ったことがなかったんですよ。
C4Dのハイクオリティーな映像表現を見て、こんなこと出来るようになるのだったら勉強して、まさたかさんに教えてもらってハイクオリティーになりたいとワクワク思ったのですが今まで使っていたソフトでは、レンダリングはグラボのGPUに任せた1フレーム0.1秒未満っていうリアルタイムレンダリングのゲーム画質みたいな形でやっていたから、Cinema 4Dもサクサク動くと思っていたら、レンダリングが CPUでガチで戦う本当の3DCGソフトということで 3分のシーンで12時間! 15分だったら単純計算60時間1回のレンダリングで、一週間の半分使っちゃう!

このままでは僕のマシーンでは 毎週15分アニメはムリ!そこから早くレンダリングする方法の試行錯誤がはじまり、最初、1フレーム1分掛かって、いたのが、7秒まで縮めることができました。

まさたかP:その方法が「手を抜こう」(笑)。僕としては、Sketch and Toonとか、いろんな機能をふんだんに使って最高のものを作りたかったんですよ!

菅原そうた:1話を1週間で作っているので、レンダリングに12時間もかかっていたら「服がずれているからやり直し」となったらタイヘンなことになるわけです。これはヤバい、ということで。秒8フレームだと早くなるので。

まさたかP:僕としては、15分のアニメを12時間で書き出せるのは奇跡だと思います。結局、第1話はスケジュールが間に合わない、ということで1秒間8フレームになりました。

菅原そうた:放送に間に合わないんじゃないかと、胃が痛い状態を毎週、繰り返しています。

監督は、スピードアップのためCinebench R15で4869CBを出す44コア・88スレッドの自作マシンを使用している。

Cinema 4Dを知らなかった人が覚えて行くアニメ

─Cinema 4Dにしたのは何か理由があったのですか?

まさたかP:僕がずっとCinema 4Dのユーザーだったからです。最初、違うソフトを使う案もありましたが、そうた監督のテスト映像が僕としてはしっくりこなかった。もっと質感にこだわった、特徴あるアニメにしたかったんです。

菅原そうた:Cinema 4Dでも、いままで使ってきたソフトと変わりなくできるだろうと思ったら、腕の軸のひねりとか、細かいところに難しいところがあって。

まさたかP:『でびどる!』は、Cinema 4Dはズブの素人のそうた監督にCinema 4Dを覚えてもらうことがテーマ。

菅原そうた:Cinema 4Dを覚えるのに1年は欲しかった。

まさたかP:1年かかっても絶対に覚えないと思う。だから実際に作ってしまおうと。僕が全部、作って、そうた監督には「書き出しボタンを押して、どんどん書き出してくれ!」と。

菅原そうた:納品ギリギリなので、「腕が逆に曲がっているからなとかして!」とまさたかPに夜中の2時にCinema 4Dのファイルを送ると、いろんなところが修正されて帰ってくるんですよ。これはラクだなと(笑)。

まさたかP:そうた監督が3日かかったやつを30分で直して返す(笑)。

菅原そうた:だったら、まさたかPが全部、やってよと思うんですが(笑)。

まさたかP:そうた監督をちゃんととしたCG監督にしようという、僕の愛ですよ。なので、『でびどる!』は、Cinema 4Dを知らなかった人が覚えて行く、というアニメでもあるんです。最終話までにどこまで覚えられるのか?

菅原そうた:『でびどる!』はビジネスの世界じゃないですか。それをCinema 4Dを買って3か月の男が挑んではダメです。

まさたかP:それもテーマだから。Cinema 4D買ってすぐにテレビアニメを作っている。なかなかない企画です。

菅原そうた:コスパ良すぎるヤツじゃん。

放送事故レベルのヘンな映像がバンバンある

─クライアントからのクレームは?

まさたかP:ぜんぜん。アイランドさんがおおらかと言うか、それも含めてギャグだからと。それもそうた監督の世界観ということで。

菅原そうた:Cinema 4Dの世界観は初めてなんですけど。

まさたかP:Cinema 4Dはハイクオリティな作品が作れるツール。なのに、Cinema 4Dを使って諦めたCGを作る。こんな使い方をしているやつもいるよと、紹介して頂けたら嬉しい。

菅原そうた:レンダリングボタンとカメラボタンくらいは覚えました。

まさたかP:第1話はそこまででしたね。次にカメラの動かし方。ボタンを押すとズームすると、とか教えながら。

菅原そうた:第3話あたりからタイムラインをちゃんと見るようになりました。

まさたかP:コンポジットタグは第3話くらいからですかね。

菅原そうた:そうですね。「これを押さないと映らないんだ」とわかった。

まさたかP:第5話くらいからステージオブジェクト使って、カメラの切り替えができるようになった。

タイムラインと膨大な表情のポーズモーフの設定。

─チュートリアルですか!

まさたかP:そうです。チュートリアルやりながらアニメ作っています。

菅原そうた:チュートリアルの途中でアニメできちゃった。

まさたかP:だから、放送事故レベルのヘンな映像がバンバンあります。でも、そんな素人ぽさがそうた監督。僕には作れないですからね。そうた監督はローデータのまま「完成品です」と納品してくるんです。僕にはとてもできない。ただ、カメラアングルだけはなんとかして欲しかった。

菅原そうた:僕もまさたかPも自分の爪痕残したがりすぎて。
まさたかP:ギャグアニメだから許されるかなと。

『スター・ウォーズ』感を出したかった

─第3話の先に第4話を流す事故がありました。

まさたかP:「第3話が間に合わない!」と言うので、「じゃ、できている第4話を先に流しちゃえ」とその場で僕の方で指示を出したんですよね。

菅原そうた: 第3話はもうどうやっても間に合わないけど、雑に出来た4話だけ先にあるみたいな謎の状況

まさたかP:Yahoo!ニュースにまでのっちゃいましたね。。。。

菅原そうた:第4話、もう少し作り込みたかったな。

まさたかP:放送メディア側にその事実を伝えなきゃいけないわけですが、その時の電話の話が面白くて。「第4話でいいんですか? 次は第3話ですよね!」と言うのを「第4話で行きたいです!」と。「僕としては『スター·ウォーズ』的な、エピソード4の次にエピソード3に行きたいです!」と。

菅原そうた:1話の間違いで『スター·ウォーズ』感を出そうとするのはムチャ。

まさたかP:そこである種、吹っ切れましたね。なにやってもいいんだと。この前はオープニングをぶった切りましたからね。
菅原そうた:もう少し時間が欲しかった。

まさたかP:時間が欲しいというからどこを直すんだと思ったら口パク。そこはどうでもいいだろう。他にもっと直すとこあるだろと。

菅原そうた:口パク大事です。

1フレーム7秒という奇跡の秒数

─最後に、まとめをお願いします。

まさたかP:結局、Sketch and Toonが使えないそうた監督に合わせるしかなかった。僕としては綺麗にラインが出るのでSketch and Toonはいいと思っているのですが・・・。そのため、モデルを2個用意しているんです。1体に対して2体被せている状態。着ぐるみみたいに真っ黒いモデルをひとつ入れて、ちょっとだけオーバーさせて線を出している。結果的にはその方法で速度を速めて、1フレーム7秒という軌跡の秒数を出しています。

アウトライン用のジオメトリとシェーディング用のモデルを同時表示しているため、リアルタイムのビューポートでも最終に近い形で表示されている。

当初は、モノを置いてテクスチャーを描き込んで、と考えていのですが、そうすると間に合わないので、派手な色をベースにしてシンプルにして、スフィアもノーマルなマテリアルをランバード200%ぐらいにして表現してあります。ポリゴンにするときはできるだけローポリ感を出すようにして。

菅原そうた:まさたかPはすごいハイエンドの人。僕だけがクオリティが低い。だから、ネットで『でびどる!』の悪口を言っている人がたまにいますが、実はすごいハイレベルの人が僕にあわせてローベルにしているだなんだと。

まさたかP:今回は、1フレーム7秒が実現できたのが成果。ネットワークレンダリングで100コア。結果的に13時間が2時間ですからね。めちゃ速い。

菅原そうた:今度は新しい機材買って速くするぞ。

まさたかP:それより、Cinema 4Dのアップグレード版を買って欲しい。

─ありがとうございました(笑)。

 

TVアニメ「でびどる!」
https://devidol.com/

製作:コチンPa!製作委員会
監督/原案/脚本:菅原そうた
原案/企画/脚本/プロデュース:まさたかP
脚本:長部一幸
キャラクターデザイン:Lat
OP曲「デビル☆アイドル」 作詞/作曲/編曲:砂守岳央・沙P
振付指導:ゲッツ
アイラ:三森すずこ
シマ:井口裕香
はな:花澤香菜
露血ッ斗(ロケット)先生/エンディングテーマ:ふかわりょう