【株式会社たき工房】web デザイナーから大きく転身、新しい映像表現をCinema 4D で制作

映像表現にテクノロジーを組み合わせ、これからの未来に新しい価値を創造する

広告制作会社のたき工房。大企業をデザインからサポートしている。そんなたき工房が力を入れだしているのが映像分野だ。今後、映像がもっと身近になってインタラクティブになったとき、広告業界は変革を求められる。そんな来るべき未来に備えて、新しい映像の研究を行っているのだ。ムービーラボ ディレクターの佐藤佳亮氏とテックラボ チーフプログラマーの石丸晋如氏のお二人にお話しを伺った。
インタビュー●大橋博之

PROFILE
佐藤佳亮
たき工房
ムービーラボ ディレクター
石丸晋如
たき工房
テックラボ チーフプログラマー

たき工房 http://www.taki.co.jp
TAKI Lab http://taki-lab.com/
TAKI Lab Instagram https://www.instagram.com/taki_lab/

web デザイナーから大きく転身

ーたき工房とは、どういった会社なのでしょうか?
佐藤:たき工房は1960 年に設立した、グラフィックデザインの会社です。現在は広告やSP ツール、企業・商品ブランディング、CI/VI、UI/UX 開発、コミュニケーション全般の企画・設計・制作からweb サイトの企画制作まで幅広く事業を行っています。

─CG 制作はどのように始まったのですか?
佐藤:僕は入社して12 年目になりますが、入社当時は丁度、web が全盛期で、web がリッチになって行った時代でした。映像表現やインタラクティブなコンテンツへの要望が高まってきたため、CG を制作するようになりました。

─佐藤さんはいつくらいからCinema 4D を使っているのですか?
佐藤:入社してすぐからです。もう、12 年になります。僕の直属の上司がCG制作にCinema 4D を使っていたので、僕もCinema 4D を使うようになった、というのが理由です。

─お二人とも映像畑ではないのですか?
佐藤:僕はweb デザイナーだったんです。それがCinema 4D で映像を作るようになって、映像ディレクターになった、という感じです。たき工房はグラフィックの会社なので、Adobe のIllustrator やPhotoshop で完結する仕事がほとんどなのですが、僕はムービーラボでCG に特化した制作物を作る開発チームにいます。
石丸:私もweb デザイナーでした。でも、web はプログラムを書くことが多いので、プログラマーに自然となって行きました。プログラマーなのでCinema 4D はそんなには使わないです。佐藤さんがデザインやモデリングしたデータをもらって、それにインタラクションをつけています。

新しい映像表現にチャレンジしていきたい

─Cinema 4D を使った仕事にはどのようなものがありますか?
佐藤:新日鐵住金さんの工場見学用映像<https://vimeo.com/325442352>や、アサヒビールさんのビールの中に入る体験ができるVRがあります。その他にも2011 年に「App Store Rewind 2011 Best iPad App」や「グッドデザイン賞」を受賞したベネッセさんの知育アプリ)でCinema4D を使用しました。

─毎年、開催されている「dotFes(ドットフェス)」に参加されているのだとか。
佐藤:「dotFes」は、web 業界で優秀な制作会社が集まり開催される、クリエイティブのためのデザインとアイデアに満ちたコミュニケーションイベントです。2008 年から始まり、日本各地でトークセッションやライブパフォーマンス、インスタレーションなどが行われています。たき工房は、2012 年から参加しています。そのときは「Sky(スカイ)」という、スマートフォンから飛び出した飛行機がモニタ上に飛び移り、飛行する作品を展示しました。スマートフォンを見るときはどうしても下を見てしまいますよね。前年に東日本大震災があったので、空を見上げるコンテンツはできないかと考えて制作しました。
また、2013 年には、「minamo(ミナモ)」という作品を制作しました。これは中国・上海のビエンナーレにも出展が決まっているということで、プロジェクションマッピングのアートぽい作品になっています。コンセプトは「テクノロジーとデザインで毎日の暮らしに新しい驚きと体験を」といったものです。2014 年に制作したのは「Gift(キフト)」というもの。簡単にいうと「だるまさんが転んだ」です。寝ている子どもを起こさないようにプレゼントを靴下のなかにいれるゲームです。

そして、2017 年に「iceBits(アイスビッツ)」という、マグネット式電子工作キット「littleBits(リトルビッツ)」を使ったゲームを開発し出展しました。これは、ポリゴンのようなデザインにすることでスタートしました。子ども向け、ということもありますが、ゲームは映像と違ってインタラクティブだから、動くことを重視しました。昔のアーケードゲームのようなローポリで可愛い感じに制作したのですが、これもCinema 4D を使っています。

さらに2018 年には「COSMOS(コスモス)」という作品を出展しました。ゲームというより、インスタレーション作品です。心拍センサーを着け、自分が星になって旅をします。心拍の速さでスピードが変わるので、操作はちょっと難度の高いものです。
石丸:この作品でのCinema 4D の使い方が特殊で、基本モデルはHoudiniで作られていますが、カメラの動きをCinema 4D で作っています。
佐藤:僕は可愛いものが好きなので、どうしてもかわいい系に行ってしまうのですが、会社としてのトライアルとして、ワンランク上の作品を目指し、クールでカッコいいものを、しかも、プログラミングを絡めて制作したものです。ポリゴンが多いと止まります。それでもデザイン重視にしつつ、CG でハイポリに見えるものを作りました。
石丸:なので、プログラミングでもかなり作り込んでいます。

─かわいい系だけではないんですね。
石丸:作品は会社として制作しますが、どうせやるなら新しいことに取り組むことを大切しています。今後は、クールでカッコいいものも増やしていくつもりです。

 

デザイナーならCinema 4D は使いやすい

─Cinema 4D は使いやすいですか?

佐藤:使いづらい、と思ったことはないですね。Cinema 4D は道具でしかないんですが、最初にスケッチを描いて、それを許にCG を作るとき、Cinema4D は楽だと思います。僕はグラフィックデザイナーではないですが、デザインをする者にとっても全部のツールが詰まっています。

─というと?
佐藤:CG 映像のキャラクターを変化をつけるためにトゥーンでレンダリングして2D にする、といったことも簡単にできます。3D にも2D にもできるので、クリエイターにとっては便利なツールです。

僕たちは企画段階は長いけれど、制作期間は1、2 か月という短期が多いのですが、10 分程度の映像ならそれくらいで作ることはできます。多分、他のツールより早いのではないでしょうか。今は、チュートリアルも充実しているので助かります。

─コストも抑えられるとか?
佐藤:クライアントが発注してくる段階で、映画を作るクオリティは求めていないんです。映画並みのクオリティで作ろうとしたら制作期間もコストも10倍はかかるでしょうね。

─グラフィック系ではCinema 4D が使いやすい、ということですね。
佐藤:web 系でCG を制作している人はみな、Cinema 4D を使っているという印象です。

─どうしてですか?
佐藤:映像制作系の人が使うCG ソフトはCAD に近いのですが、web プロダクションに入って映像を覚える人はCinema 4D を使っている会社が多いです。なぜなら、インタフェースがAdobe の製品に近いから。互換性もありますし、グラフィックの部隊にデータを渡して活用することも楽にできます。たき工房ではパッケージデザインも多く手がけているのですが、サイズを決めてレンダリングしてそのデータをはめ込むことができます。Photoshop で作るよりもCinema 4D で作る方が早いとも言えます。

─デザイン会社が映像系のコンテンツを作るとき、Cinema 4D は使いやすい?
佐藤:使いやすいと思います。今年、2019 年の「「映像作家100 人」」に選ばれたのですが、それはCinema 4D のおかげかなと(笑)。僕はweb 屋なのに映像作家に選ばれて光栄です。

 

CG とテクノロジー、センサーを融合。デジタルサイネージ時代に先手をかける

─今後、Cinema 4D を使ってやってみたいことはありますか?
佐藤:ムービーの表現とテクノロジーを組み合わせてなにかやりたいですね。今は僕と石丸はムービーラボとテックラボに分かれているのですが、もっと互いに融合したいと考えています。

─インタラクティブな映像は今後、成長領域でもありますよね。
佐藤:世の中にはCM 制作会社はたくさんあります。でも、たき工房は映像をやっていても、CM 制作会社を目指すつもりはありません。近い未来、電車のなかが全部、デジタルサイネージになって、しかも、そこにセンサーが付いていて、30 代の男性がいたら、その男性向けのCM が映し出される時代が来ると思うんです。そうなったとき、僕らはすごくチャンスなんです。だから、未来の映像表現を今、研究していて、次世代型のインタラクティブな映像を作ろうとしています。そのためにも、テクノロジーチームと組む必要があるんです。

─5G になると3D も軽くなりますよね。
佐藤:時代は変化しています。今、Cinema 4D を使って映像を作っている高校生はいっぱいいます。そんな子たちが成長して社会に出ると、僕らはあっという間に抜かれてしまう。デジタルネイティブの子どもたちの発想はそもそも僕らと違いますからね。そこに対応できないとダメなんです。

─面白いです。今は、2020 年のオリンピックをどうするかが話題なっているけれど・・・。
佐藤:その先ですよね僕らはしっかりとCG を作り続けて、そこにテクノロジーを絡めていく。それができると、将来とても楽しくなると思います。

─これからのビジネスチャンスですね。
佐藤:CG は、真剣にやらないと覚えることはできません。僕は苦しみながらCinema 4D をやってきましたが、若い子たちは楽しんでやっている。映像は携帯で撮って編集する映像ビデオグラファーはどんどん増えるでしょう。誰もが簡単にできる。でも、そこに価値を創造できる人は実は少数です。苦しみながらモノを生み出している人は少数です。

─苦しみながらやってきたことが、若い子たちは1、2 年で追い越してしまうのでは?
佐藤:でも、僕は、積み重ねてきた経験で「負けないぜ」という自信はあります。それでも、Cinema 4D を使える僕たちの次の世代が是が非でも欲しいです。インターンでもいいので、ぜひ、来て欲しいですね。